2011/5/13 J-WAVE LIVE SPRING〜Heart to Heart〜@Shibuya O-East

思っていたよりもずっと早くこのカテゴリを作る日が来ましたね…
fromじゃなくてex.椿屋四重奏な中田くんの実質的には初となるライブを見てきました。


一言で言ってしまえば、完全に「ex.椿屋四重奏」でした。2009年以降にやってきたソロライブでの顔とは全く違いました。YANCYさんと2人でやっていたソロライブの方が椿屋の影を感じさせないはずなのに、実際に受ける印象は全く逆。両脇にりょうちんと手島さんがいても、不思議なほど椿屋の影を感じさせなかった。
中田くんとりょうちんと手島さんと、という編成だけを見ると椿屋からたかしげがいなくなっただけじゃないか、と思えてしまうけど全くそんなことはなかった。そこにいたのは中田裕二という一人の唄い手であって、椿屋四重奏というバンドのボーカルである中田裕二ではなかった。何がどう違うということを言葉では説明できないのがもどかしいけど、とにかく受ける印象は完全にそうだった。
と言って、椿屋を否定したり無かったことにしている風でもなくて、それはそれで当たり前に中田くんのこれまでの道筋の中にあって、それをことさらに強調するわけでもなかったのだけど、この人まるっきりの新人ではないよね、とおそらく中田くんを知らない人にも思わせる何かはあったと思う。でもそれは私が椿屋を経て中田くんを見ているからかな。どうなんだろうな。


それにしても中田くんがステージに登場した時のあの何とも言えないざわめきは何だったんだろうなぁ。お互いにちょっと照れくさかったり、相手の様子をさぐっているようなそんな空気が流れてました。改めて考えてみたら解散後初めてのライブだもんね。それも震災がなかったら開催されることもなかったイベントライブだものね。色々思うところはあるよ、ね。

照れ隠しなのかやたらと自虐的というか卑下するようなことばかり言ってたけど、それがすごく素の中田くんを見ているようで、とても新鮮だった。今までの中田くんからもそういう発言が出ることはあったけど、基本的にはカッコつけて背伸びしまくってというのが椿屋四重奏代表(…とか言ってみたりして)としての中田裕二の振る舞いだったから、その看板が外れた生身の中田裕二ってのはこんなにも無防備で自分の弱さにうち震えている人なんだなぁ、と思ったりもしたわけです。でもそれと同時にああやって自分の自信のなさや無力さをああいった皮肉っぽい言い方ででも口に出しているあたり、やはり強かな人だとも思うわけで。…ってこうやって書くと結局椿屋の時から変わってないよね。強がりで弱気で皮肉屋で。だけどそれでもなお「ex.椿屋四重奏」を強く感じさせたのは中田くんとりょうちん、手島さんとの距離感なんだと思う。バンドの仲間としての良くも悪くも接近した関係性が全く見えなくなってて、中田くんだけが前面に出ている感じがごく自然に演出できていた。それがあまりにも自然で、ライブ中は不思議にも思わなかったけど、時間をおいて思い返してみるとかなり不思議な光景だったなぁ、と思うのです。
もちろん中田くんもすごく意識したと思うけど、それ以上にりょうちんや手島さんがふっと存在感を消して、かつ確実に中田くんを支えるってことをやってたような気がする。たった一度、それも3曲のライブを見ただけだけど。


…そろそろライブそのものの感想を。
1曲目は「新人だから新曲ばっかりです」と言いつつの「エンドレス」。
タイトルだけ見ると永遠に続く何かを思った曲みたいだけど、そこは中田裕二なので(笑)「エンドレス」と言いつつも幕が降りる時を迎えてしまうのです。でもまた生きていくのです。うろ覚えの歌詞から想像するに、一つのものがずっと続いていくというのではなくて、一つが終わってもまた次が始まって続いて行くよ、とそういった意味での「エンドレス」なんだと思う。永遠を唄うんじゃなくて、再生や再開(再会?)を願う曲。そんな印象を受けました。となると色々思ってしまうよね…今のこの状況とか、椿屋のこととか。きっとコンポジツアーでも唄ってくれるだろうし、いずれ音源にもなるんだろうな。その時を心待ちにしたい一曲でした。

2曲目にやった「リバースのカード」は過去のソロライブでも披露していた曲…なんですが!ギター2本とパーカッションが入るとこんなにも変わるのか!と鳥肌が立つくらいの変貌を遂げていました。ドラマチック、という言葉がパッと浮かんだのだけど、それすなわち椿屋っぽいということになってしまうわけでして(苦笑)。赤い照明に照らされながら唄う中田くんを見ているとどうしたって椿屋のライブを思い出さずにはいられなくて、でも、それでもなお「ex.椿屋四重奏」であり続けたんですよね。ホントに不思議なくらいに。散り際も見事だったけど、その後の移ろい方も見事というより他にないなぁ。
でもね、今こうやって書きながら適当な喩えがないかと考えていて、それが全くの正解とは到底思えないけど、自分ではしっくり来た喩えを。


残り香がね、あるんだよ。


椿の花って多分それほど匂いの強い花ではないと思うのだけど、まぁそこはこの際無視して(笑)
そこに椿屋の影は見えないんだけど、確かに何かが残っている。その残り方が「残り香」という程度の本当にさり気なくて、でも確かな刺激となる残り方だなぁ、と今(笑)思いました。
だけどそれはこの先も纏っていけばいいし、多分そう簡単には取れないと思う。…取れなくていいよ(というのはファンの願望ですかね?)


3曲目は「ひかりのまち」。この曲をDateFMに送った時の話をしていた中田くんがポロっと言った「独りよがりかもしれないけど」という言葉が、こういう言い方は適切じゃないかもしれないけど、嬉しかった。「音楽」という形のない儚いものに対する中田くんの考え方がずっと変わらずにあることを再認識できて嬉しかった。音楽の力も、無力さもちゃんとわかってて、それでもなおその力を信じて歌い続ける中田くんが、やっぱり好きだなぁ…大好きだなぁ(笑)


他に印象的だったのは先月の塩釜でのライブのことに触れたMCかなぁ。塩釜で唄って、初めて歌手をやってて良かったと思えた、ってそう言ったんだよね。これまではずっと自信がなかった、って。
それ聞いたら何かもう悔しくって。椿屋で中田くんが言ってた「一方的だけど相思相愛」が中田くん自身には実感できていなかったのかな、って。中田くんが「唄ってて良かった!」と思えるような瞬間がこれまでの10年間にはなかったのかな、って。そう思わせてあげれなかったのかな、って。
でも、落ち着いて考えたらそういうことでもないのかな、という気がしてきた。今までだって「良かった!」と思える瞬間はそれなりにあったんだと思う。私たちファンがどうこうできる話でもなかったんだと思う。ただ、今回の塩釜でのライブが中田くんにとっては本当に本当に大きな経験で、今までよりもっとずっと根源的なところでの「唄う喜び」を感じられたんだと思う。そんな体験を経た唄い手中田裕二の今後をただ楽しみにしていればいいのかな、とそのMCを聞いた瞬間の困惑から抜け出した今はそんな風に思ってる。一方的に投げつけられるものを、こちら側も全力で本気で受け止めていけばいい、それだけなんだな。結局は。


…果てしなくまとまりのないものになってしまいましたが、中田裕二初ライブの感想はこれにて終了。唐突な終わり方ですね、我ながら(苦笑)