湖沼学入門/山口瞳

湖沼学入門 (1981年) (講談社文庫)

湖沼学入門 (1981年) (講談社文庫)

日本各地の湖沼を訪ねて絵を描く。その道中でのあれこれを文章で書く。
「描く」と「書く」は別物だけど全く違うわけでもない。巧く書かれた文章は時には絵よりも豊かに風景を描き出す。そこに各々の想像力が滑り込む余地があるからこそ、その風景はより自分の心に寄り添うものになる。

最後の章の最後の一行。こんなに寂しい終わり方ってあるだろうか。
12通りの風景を書いて描いていても、そこには氏の心にぴったりと寄り添う風景が無かっただなんて。あまりにも寂しい旅の終わりだ。