2011/3/17 YANCY SINGS AND PLAYS@自由が丘 MARDI GRAS

3月11日の地震を境にして、直接の被災地ではない東京の生活も確かに変わってしまった。毎日繰り返す余震、計画停電、それに伴う交通ダイヤの乱れ…。昨日まで当たり前だったことが当たり前でなくなっていく日々。そんな中でも私の住んでいる地域、働いている地域ともに割と影響が少なかったおかげで通勤やその他の移動の不安は早々に解消されていた。だから、17日のこのライブにも予定通り行くつもりでいた。

だけど。


夕方に発表された「大規模停電の恐れあり」とのニュース。停電してしまえばさすがに地下鉄も止まってしまう!と諦めて帰ろうとした私の目に飛び込んできたのは、改札内にすら入れずに足止めされている大勢の人たち。
どうするかなぁ…あれじゃ乗れても大混雑だ…とあれこれ考えながらJR新宿駅に行くとそこにはさっきの数倍の人だかり。
その後さらにウロウロしてウムムと考えて、結局は自由が丘へ向かうことに。結果、100パーセント住宅地な自宅に向かうよりもよっぽどスムーズに移動できた。


そんなこんなで会場に到着。20人も入ればいっぱいになってしまいそうな、こじんまりとしたお店。…の片隅にピアノとドラムが。…で、私の席あそこ!?
外の寒さに加えて案内された席の(良い意味で)あまりにもあんまりな位置に震えながら着席。しばし待つ。頼んだ飲み物をチビチビ飲みながら待つ。


りょ、りょうちん…!近い…!
わー!YANCYさん!こんなに近くでいいんですか!


もう、近すぎて直視できないくらいの距離。顔を見てたら目が合ってしまう(気がする)から手元ばっかり見てた。ま、YANCYさんはほぼ背中しか見えてなかったんですが。でも話をするために体の向きを変えたり、立ち上がったりした時にはもう…!(絶句)


そんな状態で舞い上がってしまっていたので、今となっては全てが夢の中の出来事のよう。いつ停電になるか、いつ余震が来るかわからないという不安の中にいたはずが、すっかり夢見心地になっていた。空っぽの棚が並ぶスーパーやコンビニ、改札前の人だかり、薄暗い街に少し滅入っていた気持ちがホワホワと温かいものに包まれて緊張を解いていた。地震からここまでのたった数日間で、周りの名前も知らない人たちのエゴや冷たさを見せられてしまった気がして、人嫌いになりかけてたところを踏み留まらせてくれた。
人間はあたたかい、音楽はあたたかい。


今回、初めてYANCYさんの歌声を聴いたのだけど、本っ当に美声。力強くて張りのある声で、だけど柔らかくて。椿屋の後ろで静かに微笑みながらキーボードを弾いている姿しか知らなかったので、その第一声を聴いた時には思わず驚きの声を漏らしそうになってしまった。
そしてりょうちんは相変わらずりょうちんでした。ニッコニコしながらそれはそれは楽しそうにお客さんを見回してて、そういうことされると私は顔を上げることすらままならなくなってしまうんですが…(近すぎて)でも嬉しかったなぁ。いつも笑顔でいるって結構大変だよね。だけどそれをできてしまうのがりょうちんで、そんなりょうちんに中田くんは救われていたと思うよ!と改めてその明るさと笑顔に感謝してみたり。いやぁ、あの笑顔は日本の宝ですよ…(突然話が大きくなってるぞ)


リハーサルが当日になってからしかできなかったらしく、りょうちんは頭がいっぱいいっぱいだったそうで。初めて聞く曲だよぉ〜なんて苦笑いしながらも、真剣な目付きでYANCYさんの手元を見つめながらリズムを乗せていく姿からは「うっかり」なんて形容とはほど遠い、ドラマー小寺良太の気合いをこれでもかと言うほどに感じた。そういえばYANCYさんも「今日は(りょうちんを)鍛えるつもりでいるから」なんて言ってたなぁ。…さすが中田くんの上を行くドS、かなりのスパルタ式でした(笑)


YANCYさんが地震の時の話をしてくれたんですが、「子どもと奥さんと、あと猫を連れて」と話すのを聞いた途端に「ねーこもーつれていーこうー」と脳内に「楽園」が流れ出すってどうなんですか(苦笑)
ま、そんなしょうもない私のことは置いておいて。その猫ちゃんがゲージに入るのを嫌がって必死に抵抗してたっていうのを身ぶりを交えて話してて、しかもりょうちんも「こうやって?」とか言って真似してるのとか…和むわぁ(笑)

ライブの前には石巻在住のお友達の話もしてくれて。地震翌日にお友達から届いた写メがすんごい笑顔の写真だったんですって。それ、凄い話だよなぁ。普通の何事もない生活の中でもつい笑顔を忘れてしまうのに、そんな大変な状況の中で笑顔の写真を友達に届けられるっていうのがね。どんな言葉よりも強く確実に「大丈夫だよ」ってことを伝えられる手段だよなぁ…なんてことを思ったりした。
笑顔って大事だな。


何かまとまらなくなりそうなので無理矢理〆に入りますが、ピアノとドラムの珍しいコンビ(本人たちは「漫才みたい…」なんて言ってましたが)でのライブは本当に本当に温かくて優しくて自然と笑顔になれた。ギューッと縮こまっていた気持ちが解放された。またの機会を用意してもらえることを期待して、でもその時には今回行けなかった方にこそ行って欲しいなぁなんて思いつつ、次を楽しみにしていよう。


どんなライブだったか全然伝えられてないけれど、とにかく「あたたかい」ライブであったことだけは伝わるといいなぁ(…と他力本願に終わる)